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【地球は平らだった?】「地球平面説」の歴史と、驚きの現代での復活

地理・歴史
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この記事のざっくりまとめ
  • 地球平面説」とは、私たちが住む地球は丸い球ではなく、平らな円盤のような形をしている、という考え方です。
  • 古代メソポタミアやエジプトなど、昔の文明では広く信じられていましたが、古代ギリシャの時代(紀元前4世紀頃)には、哲学者アリストテレスなどが、月食の影の形などから地球が丸い(球体である)ことを証明しました。それ以降、学識のある人々の間では地球は丸い、というのが常識になりました。
  • よく「中世ヨーロッパの人々は地球が平らだと信じていた」と言われますが、これは19世紀に広まった誤解・俗説(神話)です。実際の中世でも、キリスト教会の学者を含め、多くの知識人は地球が丸いことを知っていました。コロンブスが航海に反対されたのも「地球が平らだから落ちる」ではなく「彼が計算した地球の大きさが小さすぎて、アジアまでたどり着けない」と思われたからです。
  • 驚くことに、科学的に地球が丸いことが証明された後も、19世紀以降、一部の人々が「地球は平らだ」と主張し始め、「国際平面地球学会」のような団体も作られました
  • そして近年、インターネットやSNSの普及により、陰謀論などと結びつく形で、再び「地球は平らだ!」と信じる人々(フラットアーサー)が(少数派ではありますが)世界的に見られるようになっています。もちろん、これに科学的な根拠はありません。

スマートフォンで地球儀のように世界中を見渡したり、宇宙から撮影された息をのむほど美しい「青い地球」の写真を目にしたりする現代。私たちにとって、「地球は丸い」ということは、疑いようのない、当たり前の常識ですよね。

しかし、もし「いや、地球は本当は平らなんだ! 政府や科学者たちは嘘をついている!」と真剣に主張する人々が、今も世界中にいるとしたら、驚きませんか?

かつて古代の人々が抱いていた「地球平面説(Flat Earth theory)」。それは、科学の進歩によって遠い過去の考えとなったはずでした。ところが、インターネットが普及した現代において、この考えが再び注目を集めるという、不思議な現象が起きています。

今回は、地球の形をめぐる、この「地球平面説」の意外な歴史と、なぜ現代に復活しているのか、その背景を探ってみましょう。

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古代の世界観:平らな大地と天のドーム

バビロニア人の世界地図(紀元前6世紀)。
知られる限り世界で最も古い世界地図。

人類が文明を築き始めたばかりの頃、自分たちが立っている大地が「平ら」だと感じるのは、ごく自然なことでした。見渡す限り大地は広がり、地平線や水平線はまっすぐに見えます(地球があまりにも大きいため、その丸みは日常のスケールでは感じられません)。

そのため、古代メソポタミアや古代エジプトといった初期の文明では、大地は巨大な円盤か、あるいは四角い平面であると考えられていました。そして、その平らな大地の上を、まるで巨大なドームや蓋のような天(天蓋)が覆っている、といった宇宙観が一般的でした。海は、その大地の縁を取り囲んでいるか、あるいは大地の下に広がっていると考えられていました。太陽や月、そして星々は、この天のドームの内側や表面を、決まった規則に従って動いていく、と考えられていたのです。初期の古代ギリシャの詩人ホメロス(紀元前8世紀頃?)の叙事詩などに描かれる世界観も、このような平面的なイメージに基づいています。

地球は丸かった!古代ギリシャの発見

しかし、紀元前の古代ギリシャにおいて、物事の本質を探求する哲学者や科学者たちは、日々の注意深い観察と、論理的な思考によって、この「大地は平ら」という常識に疑問を投げかけ、ついに地球が球体であることを発見します。

ピタゴラス学派(紀元前6世紀頃)

数学の定理で有名なピタゴラスとその弟子たちは、宇宙の秩序や調和を数学的な美しさに見いだそうとしました。彼らは、最も完全で美しい形である「」こそが、地球や天体の形にふさわしいと考え、地球球体説を唱えた最初のグループの一つとされています。(ただし、彼らがどのような根拠でそう考えたのか、詳しい記録は残っていません。)

アリストテレス(紀元前4世紀)

哲学の巨人アリストテレスは、単なる思弁だけでなく、観察に基づいた具体的な証拠をいくつか挙げて、地球が球体であることを明確に論証しました。彼が挙げた主な根拠は、次のようなものです。

  • 月食の時の地球の影
    月食は、太陽と月の間に地球が入ることで、地球の影が月に映る現象です。アリストテレスは、この時に月に映る地球の影の形が、常に円い弧を描いていることに注目しました。もし地球が平らな円盤なら、太陽との位置関係によっては、影の形が細長い線になったり、楕円になったりするはずです。影が常に円いということは、地球本体が球体である証拠だと彼は考えました。
  • 見える星の変化
    旅行者が南へ行けば行くほど、それまで北の地平線近くに見えていた星(例えば北極星)は低くなり、逆に南の空には、北の地域では見えなかった新しい星が見えてくる。これは、大地が平らではなく、南北方向に湾曲している(つまり丸い)からだと説明しました。
  • 水平線に近づく船の様子
    港から遠く離れた沖合から、こちらへ向かってくる船を観察していると、まずマスト(帆柱)の先端が見え始め、次に帆全体、そして最後に船体が見えてきます。もし海面が完全に平らなら、船は最初から全体が小さく見え、徐々に大きくなってくるはずです。このように、高い部分から先に見えてくるのは、海面が、つまり地球の表面が丸みを帯びているからだと、彼は正しく指摘しました。

エラトステネス(紀元前3世紀)

アレクサンドリア(古代エジプトにあった学術の中心地)の図書館長も務めた博識な学者エラトステネスは、さらに一歩進んで、地球の大きさ(全周長)を、驚くほど正確に計算してみせました。彼は、夏至の日の正午になると、ナイル川上流のシエネ(現在のアスワン)という町では、深い井戸の底まで太陽の光がまっすぐ届く(つまり太陽がちょうど真上に来る)のに、ずっと北にあるアレクサンドリアでは、同じ日時に地面に立てた棒にわずかな影ができる(つまり太陽は真上より少し南にある)という事実に気づきました。彼は、この二つの都市間の距離(約5000スタディオン、約925kmと推定されています)と、アレクサンドリアでの太陽の角度のずれ(円周の50分の1に相当する約7.2度)を測り、簡単な三角法の原理を使って、地球全体の周長を算出したのです。その計算結果(約25万スタディオン、約4万6千kmと推定)は、現代の測定値(約4万km)と比べても、その誤差はわずか十数パーセント程度という、驚くべき精度でした。

これらの古代ギリシャの賢人たちの発見と論証によって、地球が球体であるという考えは、単なる推測ではなく、科学的な根拠を持つ事実として、古代ギリシャ・ローマ世界の学識ある人々の間では、もはや常識として広く受け入れられるようになりました。ローマ時代の天文学者プトレマイオスがまとめた、地球が宇宙の中心にあるとする複雑な宇宙モデル(天動説)も、その地球が球体であることを大前提として構築されていました。

中世は暗黒時代? 地球平面説という「神話」

ここで、多くの人が学校で習ったり、あるいは物語などで見聞きしたりして、信じているかもしれない「常識」について、少し立ち止まって考えてみる必要があります。それは、

古代ギリシャ・ローマでは地球が丸いと知られていたのに、その後のヨーロッパの中世(いわゆる暗黒時代)になると、キリスト教会の強い影響力の下で、聖書の記述(大地が平らであるかのように読める箇所がある)が絶対視され、地球は平らだという考えが再び支配的になった。科学的な知識は忘れ去られ、人々は世界の果てから海に落ちることを恐れていた。そんな時代に、コロンブスが勇気をもって『地球は丸い!西へ行けばアジアに着くはずだ!』と主張し、無知な人々の反対を押し切って航海に出た…

というストーリーです。なんとなく、聞いたことがあるような気がしませんか?

しかし、歴史研究が進んだ現在では、このストーリーは、実は歴史的な事実に反する、19世紀以降に主にアメリカで作り上げられ、広められた「神話」あるいは「俗説」であることがわかっています。

実際のところ、中世ヨーロッパにおいても、古代ギリシャ・ローマ時代に確立された地球球体説は、決して忘れ去られてはいませんでした。修道院や、中世に誕生した大学などでは、古代の学問(アリストテレスやプトレマイオスの著作など)がラテン語に翻訳され、研究・教育されており、学者や聖職者といった知識層の間では、地球が球体であることは、ごく当たり前の知識として共有されていたのです。中世キリスト教神学を大成したトマス・アクィナス(13世紀)のような大学者も、その著作の中で、地球が丸いことを前提とした議論を行っています。また、中世の王様や皇帝が、その権威の象徴として手に持っている「宝珠(オーブ)」(上に十字架が乗った、黄金などで作られた球)も、まさに全世界(=球体の地球)を支配するという意味合いを込めたものです。

では、なぜコロンブス(15世紀末)は、彼の西回り航路計画に対して、あれほど多くの反対を受けたのでしょうか? それは、彼を反対した人々が「地球は平らだ、世界の果てから落ちてしまうぞ!」と考えたからでは全くありません。彼ら(スペイン王室の顧問を務めていた学者や航海者たち)も、地球が丸いことは当然知っていました。彼らがコロンブスの計画に強く反対したのは、「コロンブスが計算した地球の大きさ(円周)が、あまりにも小さすぎる!」と判断したからです。「彼が言うように西へ向かっても、アジア(インドや中国)までの距離は、彼が考えているよりずっと遠い。途中で食料も水も尽きて、生きて帰れるはずがない!」というのが、反対の主な理由でした。(そして実際、コロンブスがアジアだと信じて到達したのは新大陸アメリカであり、地球の大きさに関する見積もりは、反対派の方がはるかに現実に近かったのです。)

この「中世の人々は地球が平らだと信じていた」という誤解が、なぜこれほど広く、そして長く信じられるようになってしまったのでしょうか? その主な原因は、19世紀にあると言われています。

アメリカの国民的作家であったワシントン・アーヴィングが、1828年に出版した『クリストファー・コロンブスの生涯と航海』という本の中で、史実とは異なるフィクションを多く交えながら、コロンブスがスペインのサラマンカ大学で、地球は平らだと主張する頑固な聖職者たちを相手に、地球球体説を熱弁して論破するという、非常にドラマチックな(しかし全くの架空の)場面を描きました。この本が大ベストセラーとなり、人々の間に「コロンブス=球体説の英雄 vs 中世教会=平面説の蒙昧な人々」というイメージを強く植え付けてしまったのです。

さらに、19世紀後半になると、科学技術が急速に進歩する中で、「科学と宗教は本質的に対立するものである」という考え方(科学主義)が一部で強まりました。そして、その立場から歴史を記述した人々(例えば、ジョン・ウィリアム・ドレイパーやアンドリュー・ディクソン・ホワイトといった歴史家)が、中世のキリスト教会がいかに非科学的で、進歩を妨げてきたかを示すための格好の材料として、この「中世=地球平面説」という(誤った)エピソードを、意図的に利用し、強調して広めていったのです。

こうして、「中世の人々は地球は平らだと信じていた」という誤ったイメージは、あたかも歴史的な事実であるかのように、教科書や一般的な知識の中に定着してしまったというわけです。

まさかの復活? 現代の地球平面説

地球が丸いということは、大航海時代を経て、近代科学(ニュートン力学による万有引力の発見など)の発展、そして20世紀の航空機による世界一周や、宇宙開発(人工衛星からの地球全体の写真、月面着陸など)によって、もはや誰もが疑いようのない、完全に証明された事実となりました…

と、普通は考えますよね。

ところが、驚くべきことに、科学がこれほどまでに進歩した現代社会において、なお「地球は平らだ」と真剣に信じ、その考えを広めようとする人々が、世界中に(特にインターネットを通じて、英語圏を中心に)少数ながら存在しているのです。

近代における平面説の「復活」

この現代的な地球平面説の動きの起源は、実は19世紀半ばのイギリスにまで遡ります。サミュエル・ロウボサム(Samuel Rowbotham)という人物が、「パララックス(Parallax)」という偽名を用いて、聖書の記述を文字通りに解釈したり、自分で行った(とされるが科学的には誤った)観察や実験結果に基づいたりして、「地球は北極を中心とした動かない平らな円盤であり、太陽や月は比較的小さく、その上空を円を描いて周回している。南極大陸というものは存在せず、地球円盤の周囲は巨大な氷の壁によって取り囲まれているのだ」といった、独自の宇宙論(地球論)を唱え始めました。彼はこの考えを「ゼテティック天文学(Zetetic Astronomy)」(”Zetetic”はギリシャ語で「探求する」という意味)と名付け、精力的に講演活動や本の出版を行いました。

「平面地球学会」の誕生

ロウボサムの考えは、彼の影響を受けた人々によって引き継がれ、20世紀に入っても細々と信奉されていました。そして1956年には、イギリスでサミュエル・シェントンという人物が中心となって、「国際平面地球学会(International Flat Earth Society)」が設立されました(その後、拠点をアメリカに移したり、活動が一時停滞したりしながらも、名前を変えるなどして現在も活動を続けているグループが存在します)。彼らは、地球が球体であることを示すあらゆる科学的な証拠、特に宇宙から撮影された地球の写真や映像などは、政府(特にNASA)や、世界を陰で操る秘密組織などが、何かを隠すために作り出した巨大な陰謀であり、捏造(ねつぞう)である、と主張することが共通しています。

インターネットとSNSによる再燃

そして21世紀に入ると、予想外の形で地球平面説が再び勢いを増す、あるいは少なくとも人々の目に触れる機会が増える現象が起こります。その大きな原動力となったのが、インターネット、特にYouTubeやFacebook、Twitter(現X)、Instagramといったソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の爆発的な普及でした。

  • 地球平面説を主張する個人やグループが、ウェブサイトやブログ、そして特にYouTubeチャンネルなどを通じて、自分たちの「理論」や「証拠」とされるもの(例:地平線や水平線はどこまで行っても平らに見えるじゃないか、飛行機の窓から見ても地球の丸みは感じられない、など)を、動画などで分かりやすく(そして時には面白おかしく)発信するようになりました。
  • 同時に、既存の科学や権威(政府、NASA、科学者、専門家、マスメディアなど)に対する根強い不信感や、様々な陰謀論(例えば、NASAは月面着陸を捏造した、世界はイルミナティのような秘密結社に支配されている、ワクチンは人口削減計画の一部だ、など)と結びつく形で、地球平面説が語られるケースが増えました。「地球が丸いというのも、我々を騙すための巨大な嘘の一部なのだ」というわけです。
  • SNSのアルゴリズムは、しばしばユーザーが見たいと思う情報や、同じような考えを持つ人々の投稿を優先的に表示する傾向があります。そのため、地球平面説に関心を持った人が、関連動画や情報を次々と見ていくうちに、閉じたコミュニティの中だけで情報が循環し、偏った信念がますます強化されてしまう「エコーチェンバー現象」や「フィルターバブル」が起こりやすくなっています。コミュニティ内では、地球球体説を支持する科学的な証拠は、「洗脳された情報」あるいは「陰謀の一部」として、簡単に無視されたり、独自の理屈で「論破」されたりします。
  • 彼らは自らを「フラットアーサー(Flat Earther)」と呼び、オンラインだけでなく、時にはオフラインでの集会を開くなどして、仲間意識を強めています。また、有名なバスケットボール選手やミュージシャン、インフルエンサーなどが、SNSなどで地球平面説に言及したり、支持を表明したりして、メディアで大きく取り上げられ、話題になることもあります。

フラットアーサーたちの主張(例)

現代のフラットアーサーたちの主張する「平らな地球」のモデルは、必ずしも一枚岩ではありませんが、多くの場合、以下のような要素を含んでいます。

  • 地球は巨大な円盤状で、北極がその中心にある。
  • 南極大陸は存在せず、円盤の外周を取り囲むように、巨大な氷の壁がそびえ立っている(これが南極だと彼らは主張します)。
  • 太陽と月は、私たちが教えられているような巨大な天体ではなく、比較的小さな光源であり、円盤状の地球の上空、数千キロメートル程度の高さを、ドーム状の天蓋の下で円を描くように周回している。これにより昼夜や季節が生まれる(と彼らは説明します)。
  • 重力という力は存在しない。物体が下に落ちるのは、地球(円盤)全体が常に上向きに一定の加速度で運動しているからだ(?)、あるいは単純に物体の密度の違いによって説明できる、などと主張します。
  • NASAや各国の宇宙機関が行っている宇宙探査や、人工衛星から送られてくる地球の画像などは、全てが巧妙に作られた嘘、CG、あるいはスタジオでの撮影による捏造である。宇宙空間そのものが存在しない、と主張する人さえいます。
  • なぜこのような壮大な嘘が維持されているのか? その理由については、「一般大衆を支配しやすくするため」「真実(例えば神の存在など)を隠蔽するため」「莫大な宇宙開発予算を騙し取るため」など、様々な陰謀論的な説明がなされます。

もちろん、これらの主張には一切の科学的な根拠はありません。地球が(厳密には完全な球ではなく、赤道付近が少し膨らんだ回転楕円体に近い形ですが)球体であることは、何世紀にもわたる科学的な観測、測定、実験、そして理論によって、疑いの余地なく証明されています

日食や月食の仕組み、季節の変化、昼夜の存在、コリオリの力(台風の渦の向きなどが変わる力)、異なる場所での星の見え方の違い、GPS衛星測位システムが機能する原理、長距離を飛ぶ航空機が最も効率的なルート(大圏航路)として必ず曲線を描いて飛ぶこと、そして何よりも、宇宙空間から直接撮影された無数の地球の写真や映像、宇宙飛行士たちの証言… これら全てが、地球が球体であることを示す動かぬ証拠です。現代の地球平面説は、科学的な議論の対象となるものではなく、疑似科学(科学を装っているが科学的根拠がないもの)あるいは陰謀論の一種として分類されています。

なぜ今、平面説が? 背景にあるもの

では、これほどまでに科学的な証拠が揃っているにも関わらず、なぜ現代において、あえて「地球は平らだ」と信じる人々が(少数派とはいえ)存在するのでしょうか? その背景には、単に科学的な知識が不足している、というだけでは説明できない、より複雑な現代社会特有の要因があると考えられています。

権威への根深い不信感

政府、科学者、専門家、大学、マスメディアといった、社会の「権威」とされる存在や制度に対する、根深い不信感。彼らが発表する情報は信用できない、自分たちに都合の悪い真実を隠しているに違いない、という猜疑心。

陰謀論的な世界観

世界は、一般の人々には知らされていない、一部のエリートや秘密組織によって裏で操られており、私たちは彼らが作り出した「偽りの現実」の中で生かされているのだ、という陰謀論的な世界観への親近感。地球平面説は、そうした陰謀論の中でも特にスケールが大きく、魅力的に感じられるのかもしれません。

インターネットとSNSの功罪

インターネット、特にSNSは、情報へのアクセスを容易にした一方で、自分が見たい情報、信じたい情報だけを選び取り、同じ考えを持つ仲間とだけ繋がり、その中で信念を過激化させてしまう(フィルターバブル、エコーチェンバー)という現象も引き起こしました。地球平面説のような非主流の考えも、ネット上では容易に「仲間」を見つけ、独自のコミュニティを形成し、その中で「真実」として流通・強化されやすくなっています。また、科学的に誤った情報や、意図的なデマ、フェイクニュースが拡散しやすい環境も、問題を助長しています。

「真実を知る者」というアイデンティティ

多くの人が信じている「常識」は嘘であり、自分たちだけが隠された「真実」を知っているのだ、という感覚は、ある種の優越感や、コミュニティへの強い帰属意識を生み出すことがあります。特に、社会の中で疎外感を感じている人々にとって、こうしたコミュニティは魅力的な居場所となる可能性があります。

科学リテラシーと批判的思考の課題

複雑化する現代科学の内容を理解することの難しさや、学校教育における科学リテラシー(科学的な情報を正しく理解し、評価する能力)や批判的思考(情報を鵜呑みにせず、多角的に検討する能力)の教育が十分でないことも、背景にあるかもしれません。直感的に「だって平らに見えるじゃないか」と感じることを、科学的な証拠よりも優先してしまう傾向も指摘されています。

地球平面説が現代において再び(限定的にではありますが)広がりを見せている現象は、単なる「トンデモ説」として片付けるだけでなく、現代社会における情報との向き合い方、科学への信頼の揺らぎ、そして人々が何を信じ、どのようなコミュニティを形成していくのか、といった、より大きな問題を私たちに映し出しているのかもしれません。

まとめ:「常識」を疑うこと、信じること

私たちが住む地球の形。古代の人々はその大地を平らだと考え、星々の動きからその形が球であることを見抜いたギリシャの賢人たちが現れ、大航海時代を経てその事実は揺るぎないものとなり、そして宇宙時代には、私たちはその美しい青い球体の姿を、誰もが目にすることができるようになりました。

しかし、その歴史の道のりは、私たちが思っているほど単純ではありませんでした。「中世の人々は皆、地球が平らだと信じていた」という、広く浸透しているイメージが、実は近代になってから作られた「神話」であったこと。そして、科学が万能であるかのように見える現代において、再び「地球は平らだ」と真剣に主張する人々が登場しているという、驚くべき現実。

地球平面説を巡るこれらの物語は、私たちにとっての「常識」がいかに時代や文化によって変わりうるか、そして人々が何を「真実」として受け入れ、信じるのかが、その時代の知識だけでなく、社会状況や情報環境、そして個人の心理によって、いかに複雑に左右されるかを示しています。

もちろん、科学的な探求によって積み重ねられてきた膨大な証拠に基づけば、地球が(ほぼ)球体であることは、揺るぎない事実です。しかし、なぜ地球平面説のような、科学とはかけ離れた考えが、今もなお(あるいは新たに)一部の人々の心を捉えるのか、その背景にある社会や心理のメカニズムについて考えてみることは、情報が洪水のように押し寄せる現代社会を、私たちがより賢く、そして批判的に生きていく上で、決して無駄ではないのかもしれません。

「常識」とされることを健全に疑ってみることの大切さと、根拠のない情報や陰謀論に惑わされずに、確かな知識に基づいて判断することの重要性。その両方のバランス感覚が、今、私たち一人ひとりに求められていると言えるでしょう。

※本記事では英語版も参考にしました

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