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【5月1日】切手の誕生!世界初の郵便切手「ペニー・ブラック」発行の日

今日は何の日?
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この記事のざっくりまとめ
  • ペニー・ブラック(Penny Black)」は、1840年の今日、5月1日にイギリス(大英帝国)で発行された、世界で初めての郵便切手です。
  • 黒いインクで印刷され、図案は当時の若きヴィクトリア女王の横顔。額面は1ペニーで、裏には糊がついていました。
  • この切手の誕生は、ローランド・ヒルという人物が提唱した画期的な郵便制度改革(料金を全国均一・低料金にし、差出人が前払いする方式)の実現に不可欠なものでした。
  • しかし、大きな問題がありました。黒い切手に押された赤い消印が、薬品で消されやすく、切手が不正に再利用されてしまうことがわかったのです。そのため、ペニー・ブラックはわずか1年足らずで発行が停止され、すぐに赤いインクの「ペニー・レッド」に切り替えられました
  • 世界最初の切手であるペニー・ブラックは、切手収集の世界では非常に有名で、歴史的な価値が高く評価されています。

今では手紙やハガキを送る際に、ごく当たり前に使っている「郵便切手」。この、郵便料金を事前に支払った証として貼り付ける、小さくて便利な紙片が、世界で初めて登場したのはいつかご存知でしょうか?

その記念すべき第一号となった切手が発行されたのが、1840年の今日、5月1日のことでした。その切手の名前は「ペニー・ブラック(Penny Black)」。その名の通り、黒いインクで印刷された、額面1ペニーの切手です。

今回は、世界を変えたこの小さな黒い紙片、ペニー・ブラックがどのようにして生まれ、なぜ重要なのか、そして意外と短い期間しか使われなかった理由など、その誕生の物語と歴史的な意義について、簡潔にご紹介します。

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手紙を出すのが大変だった時代:郵便改革の必要性

19世紀前半までのイギリスの郵便制度は、現代の私たちからすると、信じられないほど複雑で、しかも非常に高価なものでした。

  • 料金は距離と枚数で計算
    今のように重さで料金が決まるのではなく、手紙の枚数と、送り先までの距離に応じて、料金が細かく決められていました。料金表は非常に複雑でした。
  • 料金は受取人払い
    しかも、料金を支払うのは手紙を送る人(差出人)ではなく、**受け取る人(受取人)**が基本でした。そのため、受取人が「こんな高い料金は払えない」と受け取りを拒否したり、あるいは不在で届けられなかったりすることが頻繁にありました。
  • 庶民には高嶺の花
    料金自体が非常に高かったため、一般庶民が気軽に手紙を送ることは難しく、郵便は一部の裕福な層や、公的な機関のためのもの、という側面が強かったのです。

このような状況は、産業革命が進み、人々や情報の移動が活発になるにつれて、イギリス社会の発展を妨げる大きな障害となりつつありました。

ローランド・ヒルの画期的なアイデア:「安く、誰でも、前払いで」

この旧態依然とした郵便制度に、大胆な改革案を提唱したのが、ローランド・ヒル(Rowland Hill)という人物でした。彼は教師などを務めた人物ですが、当時の郵便制度の問題点を鋭く分析し、1837年に改革案をまとめた小冊子を発表しました。

彼のアイデアの核心は、以下の通りです。

  1. 全国均一料金
    複雑な距離制をやめ、イギリス国内ならどこへ送っても同じ料金にする
  2. 低料金化
    料金を大幅に引き下げ、誰でも気軽に利用できるようにする(例えば、最低料金をわずか1ペニーにする)。
  3. 重量制の導入
    料金は手紙の枚数ではなく、重さで決める
  4. 差出人前払い
    料金は受取人ではなく、差出人が事前に支払う
  5. 前払いの証明=切手
    そして、その前払いを証明するために、裏に糊(のり)がついた小さな紙片(切手)を導入し、差出人がそれを買って手紙に貼る。

ヒルは、料金を劇的に安くすれば、利用者が爆発的に増え、郵便事業全体の収入はむしろ増えるはずだ、と主張しました。この画期的で、社会の利益にかなう提案は、当初は郵便局関係者などの抵抗にあったものの、国民や産業界から大きな支持を集め、ついに議会を動かしました。1840年、このヒル提案に基づいた新しい郵便法が施行されることになったのです。

世界初の切手「ペニー・ブラック」誕生 (1840年5月1日)

この新しい郵便制度を実現するための鍵となったのが、料金前払いを証明する「郵便切手」でした。世界で初めてとなるこの切手のデザインには、様々な議論がありましたが、最終的に選ばれたのは、当時のイギリスの若き君主、ヴィクトリア女王(当時21歳)の美しい横顔の肖像でした。これは、女王即位を記念して作られたメダルのデザインを基にしており、気品あふれる姿は国民にも受け入れられました。

そして、改革の象徴である1ペニーという額面が与えられ、印刷には黒色のインクが使われました。こうして、歴史上最初の郵便切手、「ペニー・ブラック(Penny Black)」が誕生したのです。

ペニー・ブラック

1840年の今日、5月1日、このペニー・ブラックは、ロンドンの郵便局などで一般の人々への販売が開始されました。(実際に郵便料金として使用できるようになったのは、5月6日からでした。)

この世界初の切手には、いくつかの特徴がありました。

  • 糊付き
    今では当たり前ですが、裏にが塗られており、湿らせるだけで封筒に貼れるようになっていました。
  • 美しい凹版印刷
    ヴィクトリア女王の肖像は非常に精巧な線で彫られており、背景にも複雑な模様が施され、偽造を防ぐ工夫がされていました。
  • 国名表記なし
    世界で最初の切手だったため、「イギリス」という国名が印刷されていません。発行国を示す必要がなかったからです。これは現在でもイギリス切手の伝統となっており、国王や女王の肖像が国名表記の代わりとされています。
  • 目打ちなし
    今の切手のように、簡単に切り離せるミシン目(目打ち)はまだありませんでした。大きなシート(1シート240枚)で印刷されたものを、ハサミやナイフで一枚一枚切り離して使っていました。そのため、古いペニー・ブラックの縁がギザギザではなく、直線的にカットされているのはこのためです。
  • チェック文字
    各切手の左下と右下の角には、AA, AB, AC… BA, BB,… TLといったアルファベットの組み合わせが印刷されていました。これは、シートのどの位置(何列目の何番目)の切手かを示すもので、これも偽造防止や管理のための工夫でした。

なぜすぐに消えた? 赤い消印の問題

ペニー・ブラックの導入と郵便制度改革は大成功を収めました。郵便物の量は劇的に増加し、人々は安価で便利な郵便サービスを享受できるようになりました。まさに、コミュニケーションのあり方を変えた、歴史的な切手となったのです。

しかし、意外にも、この輝かしい世界初の切手は、わずか1年足らず(1841年2月には新しい切手に切り替え)という、非常に短い期間しか使われませんでした。なぜでしょうか?

その理由は、使用済みを示すために押される「消印」にありました。

当時、ペニー・ブラックに押されていた消印は、赤い色のインクが使われていました(形はマルタ十字と呼ばれる十字形でした)。ところが、黒い切手の上に押された赤い消印は、少し見えにくいという問題がありました。さらに、もっと深刻だったのは、悪意のある人が特殊な薬品を使うと、この赤い消印を比較的簡単に消し去ることができてしまったのです。

これは何を意味するかというと、一度使われたペニー・ブラックの消印を消して、もう一度郵便料金として不正に使用する(切手を「再利用」する)ということが、可能になってしまったのです。これは、料金前払いを基本とする新しい郵便制度の根幹を揺るがしかねない、重大な欠陥でした。

この問題を解決するため、郵便当局は迅速に対応しました。それは、切手の色と消印の色を入れ替えるという、シンプルな、しかし効果的な方法でした。

  • 切手の印刷色を、黒からに変更
    → 「ペニー・レッド(Penny Red)
  • 消印の色を、赤からに変更

こうすることで、赤い切手の上に押された黒い消印は非常にはっきりと見えるようになり、しかも薬品を使っても消すことが格段に難しくなりました。こうして、ペニー・ブラックはその歴史的な役割を終え、同じデザインの「ペニー・レッド」が、その後約40年間にわたってイギリスの最も基本的な切手として使われ続けることになったのです。

切手収集家たちの憧れ

発行された期間はわずか1年足らずと短かったペニー・ブラックですが、世界で最初に発行された郵便切手として、その歴史的な価値と知名度は絶大です。切手収集の世界においては、まさに特別な存在であり、世界中のコレクターにとって「いつかは手に入れたい」憧れの切手の一つとなっています。

発行された総枚数は約6800万枚と、決して極端に少ないわけではありません。しかし、そのほとんどは実際に手紙に貼られて使われ、消印が押されています。また、180年以上も前に作られた紙製品であるため、破れやシミがなく、きれいな状態で現存しているものは貴重です。特に、未使用(ミント)の状態のものや、切り離されずに複数の切手が繋がったままの「ブロック」や「ストリップ」、手紙に貼られたままの状態で残っている「カバー(エンタイヤ)」、あるいは特殊な消印(例えば、発行初日の消印など)が押されたものなどは、非常に希少価値が高く、オークションなどで驚くような高値で取引されることもあります。

まとめ:小さな紙片が変えた世界

1840年の今日、5月1日にイギリスで産声を上げた、世界初の郵便切手「ペニー・ブラック」。それは、ローランド・ヒルという一人の改革者の visionary なアイデアと、それを実現した当時の技術が生み出した、画期的な発明でした。

このわずか1ペニーの小さな黒い紙片は、それまで一部の人々の特権のようであった郵便サービスを、誰もが安価で手軽に利用できる、近代的で民主的なコミュニケーション手段へと変える、大きなきっかけを作りました。手紙を通じた情報のやり取りを爆発的に増やし、人々の暮らし、ビジネスのあり方、そして社会全体の結びつきに、計り知れないほど大きな影響を与えたのです。

わずか1年足らずで主役の座を「ペニー・レッド」に譲ったペニー・ブラックですが、その存在は「世界最初の切手」として、切手収集の世界だけでなく、郵便の歴史、コミュニケーションの歴史、そして近代社会が形作られていく歴史において、永遠に特別な輝きを放ち続ける、象徴的な一枚と言えるでしょう。

今日、もし手紙を送る機会があったら、切手を一枚貼るときに、このペニー・ブラックの物語と、それが切り開いた便利な郵便制度の始まりに、少しだけ思いを馳せてみるのはいかがでしょうか。

※本記事では英語版も参考にしました

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