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【植物は「痛み」を感じている?】バクスター効果:科学界を揺るがした、植物とのテレパシー実験

科学
この記事のざっくりまとめ
  • バクスター効果(Backster effect)」とは、植物にも人間のような感情や感覚があり、人間が植物に危害を加えようとしたり、危険を感じた瞬間にそれを察知して反応する、という説のことです。
  • 1966年、CIAの尋問官であり、嘘発見器(ポリグラフ)の専門家だったクリーヴ・バクスターによって発表されました。
  • バクスターは、植物に嘘発見器の電極を繋ぎ、隣でエビを熱湯に投入するという「植物に危害を加える状況」を作ったところ、植物が激しく反応した(と主張した)ことからこの説が生まれました。
  • 当時は「植物はテレパシー能力を持っているのか!」と世界中で大ブームを巻き起こしましたが、その後、世界中の科学者による追試では一度も同様の結果が得られませんでした
  • 現在では科学界から「疑似科学」とみなされていますが、「植物にも感覚があるかもしれない」という夢のある問いかけとして、都市伝説やポップカルチャーの中で今なお根強く語り継がれています。

「観葉植物に話しかけると元気に育つ」
「モーツァルトを聴かせると野菜が美味しくなる」

こんな話を聞いたことはありませんか?
私たちは心のどこかで、植物が単なる「動かない緑の物体」ではなく、実は何かを感じ取り、言葉を理解しているのではないか、というロマンを抱いています。

そんな「植物の心」を巡る歴史の中で、最も刺激的で、最も物議を醸したのが「バクスター効果」です。この実験の衝撃はあまりに大きく、1970年代には「植物と心を通わせる方法」といった本がベストセラーになり、NASAの科学者までが真剣に議論する事態となりました。

科学の最前線で起きた、この「心温まる、しかし少し怖い」ミステリーの正体を探っていきましょう。

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嘘発見器が示した「植物の悲鳴」

実験の首謀者であるクリーヴ・バクスターは、当時、CIAで嘘発見器(ポリグラフ)を使い、スパイの尋問を行うプロフェッショナルでした。ある日、彼は自分のオフィスにあったドラセナという観葉植物に、ふと興味本位で嘘発見器の電極を繋いでみました

バクスターが植物に水をやると、グラフには人間が喜びを感じたときのような穏やかな波形が出ました。これに味を占めた彼は、「植物に脅威を与えたらどうなるか?」という実験を思いつきます。

バクスターは植物の葉を火で炙ろうとしました。その瞬間、植物は火に触れてもいないのに、嘘発見器の針が「恐怖」を感じたかのように激しく振れたのです。

さらに決定的な事件が起きます。バクスターは「隣で生きたエビを熱湯の中に落とす」という実験を行いました。植物には全く関係のないエビの苦痛にもかかわらず、植物はエビが茹で上がる瞬間に合わせて、グラフが激しく反応したのです。

バクスターは確信しました。

植物は、周囲で起きている『死の苦しみ』や『攻撃の予兆』をテレパシーのように感知し、電気的な反応を見せているのだ!

と。

世界を熱狂させた「緑のテレパシー」

このニュースは、科学誌だけでなく大衆紙でもセンセーショナルに報じられました。

当時のアメリカでは「愛と平和」を謳うヒッピー文化が花開いており、「植物と対話する」という概念は時代の空気に完全にマッチしました。

バクスターの実験を元に「植物には意識がある」「彼らもまた痛みを感じ、人間と共感している」という主張が広まり、読書家たちはこぞって観葉植物にクラシック音楽を聴かせ、話しかけるようになりました。

「植物も生きており、人間の愛に応える存在である」。これは、環境保護や動物愛護の文脈とも相まって、一種の宗教的な信仰に近い形で社会に浸透していったのです。

なぜ「疑似科学」とされたのか?

しかし、科学の世界はそんなに甘くありません。バクスターの発表を聞いた世界中の植物学者や心理学者が、彼の実験を再現しようとこぞって追試を行いました。

結果は……すべて失敗に終わりました。

  • 電気的ノイズの影響
    植物の表面は湿度や微細な汚れに非常に敏感です。嘘発見器のような超高感度な測定器を使えば、植物自体の意識ではなく、室内の湿度の変化や、測定環境のわずかな電気的ノイズに反応しているだけではないか、という指摘がなされました。
  • 実験の再現性の欠如
    バクスター以外の誰も、エビを茹でて植物を反応させることはできませんでした。
  • バイアスの影響
    「反応してほしい」という実験者の期待が、グラフの解釈を歪めていた可能性(実験者効果)が強く指摘されました。

結局、バクスターが示した「グラフの針の振れ」は、植物の感情ではなく、測定機器の誤作動や環境的な要因で説明がつくことが判明し、バクスター効果は科学的な説としては「否定」されることとなりました。

まとめ:それでも「植物には何かがある」という不思議

現代科学において、バクスター効果は「科学ではない(疑似科学)」という結論が出ています。しかし、だからといって「植物が何も感じていない」というわけではありません。

近年の植物学では、植物が根っこを通じてお互いに情報を伝達し合ったり、害虫に襲われたときに匂い物質(揮発性物質)を出して仲間に危険を知らせたりしていることが分かってきました。これを「植物のコミュニケーション」と呼び、学術的な研究が進んでいます。

植物は、人間が理解できる「痛み」や「恐怖」とは全く異なる方法で、刻々と変化する周囲の環境をモニターし、生き残るための戦略を立てています。

バクスター効果は、私たちの「植物と心を通わせたい」という純粋な願いが、科学的な仮面をかぶって現れた一過性の夢だったのかもしれません。しかし、その夢がきっかけとなって、人間が「植物という知性ある隣人」にもっと関心を抱くようになったことは、ある意味で非常に興味深い歴史のいたずらと言えるのではないでしょうか。

今度、あなたの部屋にある観葉植物に水をあげるとき、そこにテレパシーがあるかどうかは分かりませんが、「いつもありがとう」と声をかけてみてください。たとえ植物が反応しなかったとしても、あなたの心にはきっと、何かしらの優しい変化が生まれるはずですから。

【参考リンク】
バクスター効果 – Wikipedia
※本記事では英語版も参考にしました

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科学動物・生物
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