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【「続きはCMのあとで!」の正体】ツァイガルニク効果:なぜ私たちは「やりかけの事」ばかり気になってしまうのか?

哲学・心理
この記事のざっくりまとめ
  • 「ツァイガルニク効果」とは、人間は「完全に終わった事」よりも、「途中で中断されている事」や「未完成の事」の方を強く記憶に留め、気になってしまうという心理的現象のことです。
  • 1920年代に、旧ソビエト連邦の心理学者ブルーマ・ツァイガルニクによって提唱されました。
  • 彼女の指導教官が、カフェのウェイターが「まだお会計が済んでいない客の複雑な注文」は完璧に覚えているのに、「お会計が終わった瞬間に綺麗さっぱり忘れてしまう」ことに気づいたのが研究のきっかけです。
  • テレビ番組の「衝撃の結末はCMのあとで!」や、連続ドラマの「いいところで来週へ続く(クリフハンガー)」など、私たちの興味を惹きつけるためのマーケティング手法として日常的に使われています
  • 仕事や勉強に応用すれば、「あえてキリの悪いところで作業を中断する」ことで、モチベーションと集中力を高く保つライフハックとして強力な武器になります。

テレビのバラエティ番組を見ていて、いよいよ正解発表! という一番いいタイミングで、「衝撃の結末は、CMのあとで!」とテロップが出てイラッとした経験はありませんか?
「うわー、気になる! 早く見せろ!」と文句を言いながらも、結局チャンネルを変えられずにCM明けまで待ってしまったなら、あなたはすっかりテレビ局の罠にハマっています。

また、仕事や勉強で「あれも終わってない、これも途中だ……」と、やりかけのタスクばかりが頭の中をぐるぐる回って夜も眠れない、なんていう経験を持つ人も多いでしょう。

人間はなぜ、終わったことの達成感よりも、「やりかけのモヤモヤ」にここまで心を支配されてしまうのでしょうか。

今回は、現代のエンタメ業界やマーケティングで使い倒されており、私たちの集中力や記憶力をハックする強力な心理法則「ツァイガルニク効果」について、その面白い発見のきっかけから、実生活で役立つ裏技まで徹底解説していきます。

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発見のきっかけは「カフェの天才ウェイター」

この現象の名前は、1920年代に旧ソ連の心理学者であるブルーマ・ツァイガルニク(女性)の名前に由来しています。

研究のきっかけは、彼女の指導教官でありゲシュタルト心理学の創始者の一人であるクルト・レヴィンが、ベルリンのカフェで食事をしていたときの「ある気づき」でした。

そのカフェのウェイターは、メモも取らずに大勢の客の複雑な注文を完璧に暗記し、間違えずに配膳する天才的な記憶力を持っていました。レヴィンが感心して、お会計を済ませて店を出た直後に

さっき私が注文したメニュー、覚えてる?

と尋ねてみたところ、なんとウェイターは

全く覚えていません

と答えたのです。

天才的な記憶力を持っていたわけではなく、彼の脳は「お会計が終わっていない(未完了の)注文」だけを特別なフォルダに入れて記憶し、「お会計が終わった(完了した)注文」は即座にゴミ箱に捨てていたのです。

これに興味を持ったツァイガルニクは、実験を行いました。

被験者たちにパズルや粘土細工などの簡単な作業を複数やってもらいます。このとき、半分の作業は最後まで完成させ、もう半分の作業は「あえて途中で強制終了(中断)」させました。 その後、「さっきどんな作業をやりましたか?」と質問すると、被験者たちは完了した作業よりも、中断された作業の方を約2倍も多く記憶していたのです。

なぜ「やりかけ」は頭から離れないのか?

では、なぜ私たちの脳はこのような働きをするのでしょうか。

人間が何かの目標に向かって行動を始めると、脳内に「それを成し遂げたい」という一種の「緊張状態」が生まれます。この緊張は、タスクが完全に完了するまで持続し、完了した瞬間にパチンと弾けてリセット(解放)されます。

未完了のままでいると、脳内では「まだ終わってないぞ! 早く終わらせてスッキリしろ!」というアラートが鳴り続けるため、結果としてその事柄が強く記憶にこびりつき、無意識のうちに気を取られてしまうのです。

世の中はツァイガルニク効果に満ちている

この「人間は未完成のものに強烈に惹きつけられる」という性質は、ビジネスやエンターテインメントの世界で最もコスパの良いマーケティング手法として使われています。

  • 連続ドラマやアニメの「クリフハンガー」
    主人公が絶体絶命のピンチに陥った瞬間や、犯人の顔が映りそうになった瞬間に「To Be Continued(つづく)」。視聴者は一週間、そのモヤモヤ(緊張状態)を抱えたまま過ごすため、次回を絶対に見逃せなくなります。
  • ウェブ記事の「続きを読む」
    SNSの広告などで、魅力的なエピソードの途中で「続きはこちらで!」や「この後、驚きの展開が!」と煽ってクリックさせる手法です。
  • ゲームの「コンプリート要素」
    RPGのアイテム図鑑や、実績解除システム。あと少しで100%になるという「未完了のモヤモヤ」を利用して、プレイヤーを長時間ゲームに釘付けにします。

ライフハックとして逆利用!「あえて中途半端でやめる」技術

ツァイガルニク効果は、他人に操られるとイライラしますが、「自分のやる気をコントロールする武器」として使えばこれほど強力なものはありません。

仕事や勉強のモチベーションを保つための、究極のライフハックを紹介しましょう。それは、「あえてキリの悪いところで今日の作業を終える」ことです。

例えば、ブログの記事を書くとき。「よし、1つの章を書き終えたから今日はここまで!」とキリ良く終わらせてしまうと、緊張状態がリセットされてしまい、翌日「さあ、また新しい章をゼロから書き始めるぞ」という腰が非常に重くなります。

逆に、「次の章のタイトルだけ書いてパソコンを閉じる」とか、「文章の途中でわざと書くのをやめる」という状態にしておきます。すると、ツァイガルニク効果が発動し、あなたの脳は無意識のうちに「早く続きを書いてスッキリさせたい!」とウズウズし始めます。翌日、作業机に向かった瞬間に、前日の勢いそのままにスムーズに作業を再開できるのです。

かの有名な文豪アーネスト・ヘミングウェイも、「執筆がうまくいっているとき、次に何が起きるか分かっているところで必ずペンを置く」という独自の手法を実践していたそうです。まさにツァイガルニク効果の達人ですね。

まとめ:モヤモヤを飼いならそう

「やりかけの事」が気になってしまうのは、あなたの集中力がないからでも、性格がだらしないからでもありません。人間の脳がそういう風に設計されているだけなのです。

もし、どうしても仕事に手がつかなくて悩んでいるなら、まずは「たった3分だけ」手をつけてみてください。そして、一番ノッてきたところで、あえて作業を中断してコーヒーを淹れに行きましょう。

席に戻る頃には、「続きをやりたくてたまらない自分」になっているはずです。脳のバグである「ツァイガルニク効果」をうまく飼いならして、あなた自身のモチベーションエンジンとして活用してみてくださいね。

【参考リンク】
ツァイガルニク効果 – Wikipedia
※本記事では英語版も参考にしました

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