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【1日は24時間じゃない?】「時間の遅れ」:アインシュタインが暴いた、宇宙の最も奇妙なルール

科学
この記事のざっくりまとめ
  • 時間の遅れ(Time dilation)」とは、動いているスピードや、いる場所の「重力の強さ」によって、時間の進むスピードが変わってしまうという物理現象のことです。
  • 天才物理学者アルベルト・アインシュタインが提唱した「相対性理論」によって予言され、現在では数々の実験によって完全に証明されています
  • 理由の1つ目は「スピード」宇宙船のように猛スピードで移動している人ほど、止まっている人に比べて時間がゆっくり進みます(特殊相対性理論)
  • 理由の2つ目は「重力」ブラックホールのように重力が極端に強い場所にいる人ほど、時間がゆっくり進みます(一般相対性理論)
  • 遠い宇宙の話に聞こえますが、実は私たちが毎日使っているスマホの「GPS(位置情報)」は、宇宙空間と地上の「時間のズレ」を計算して補正しなければ、あっという間に何キロも現在地が狂ってしまうという、ゴリゴリの実用技術なのです。

楽しい時間はあっという間に過ぎ、退屈な会議の時間は永遠のように長く感じる。

これは単なる人間の心理的な錯覚であり、時計の針は「誰にとっても平等に、全く同じスピードで」進んでいる。私たちはそう信じて疑いません。

しかし、20世紀の初頭、一人の天才物理学者によってその常識は完全にひっくり返されました。

アルベルト・アインシュタインです。

彼は、「時間というのは絶対に変わらない基準ではなく、人によって伸びたり縮んだりするゴムのようなものだ」という、直感に反する事実を突き止めました。

今回は、数式を一切使わずに、この宇宙で最も不思議でロマンチックな現象「時間の遅れ」の仕組みについて解説していきます。

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光のスピードだけは絶対に変わらない

「時間の遅れ」を理解するためのたった一つのルール。
それは「光のスピードは、誰がどう見ても常に一定である」ということです。

例えば、時速100キロで走る車から、時速100キロでボールを前に投げたら、外に立っている人からはボールが時速200キロで飛んでいるように見えますよね。

しかし、光の場合はそうはいきません。光の速さ(秒速約30万キロ)に近い猛スピードの宇宙船から前方に光を放っても、外から見ている人にとっても、宇宙船に乗っている人にとっても、その光は「秒速約30万キロ」のままなのです。

「そんな馬鹿な。スピードの足し算がおかしくなってしまうじゃないか」と思いますよね。
アインシュタインはこう考えました。

光のスピードが絶対に変わらないのなら、帳尻を合わせるために『時間』の方を遅らせるしかない

と。

ここから、時間を遅らせる2つの大きな要因が発見されました。

理由①:速く動くほど、時間はゆっくり進む(スピードによる遅れ)

一つ目の要因は「移動するスピード」です。
猛スピードで移動している物体は、止まっている物体に比べて時間がゆっくり流れます

これを分かりやすく例えたのが、有名な「双子のパラドックス」という思考実験です。

地球にいる双子の兄と、光の速さに近いスピードが出せる宇宙船に乗って宇宙旅行に出かけた弟がいるとします。弟が宇宙を旅している間、彼の時計の針はゆっくりと進みます(弟自身はそれに気づきません)。
数年後に弟が地球に帰還してみると、自分はまだ若々しいのに、地球で待っていた兄はおじいちゃんになってしまっていた、という現象が起こるのです。

私たちが乗る新幹線や飛行機程度のスピードでも、ごくわずか(1秒の何億分の一というレベル)ですが、確実に時間は遅れています。

理由②:重力が強いほど、時間はゆっくり進む(重力による遅れ)

二つ目の要因は「重力」です。
質量が大きく、重力が強い星(地球よりも太陽、太陽よりもブラックホール)の近くにいるほど、時間はゆっくりと進みます。重力が空間と時間を「歪ませる」からです。

この現象を最もドラマチックに描いたのが、クリストファー・ノーラン監督のSF映画『インターステラー』です。
主人公たちが、巨大ブラックホールのすぐ近くにある「重力の強い水の惑星」に降り立つシーンがあります。そこでは、「この星での1時間は、地球での7年に相当する」という恐ろしい事実が突きつけられます。ほんの数時間だけ任務をこなして宇宙船に戻ると、上で待機していた仲間がすっかり白髪になって老け込んでいた……という絶望的な描写は、この「重力による時間の遅れ」を正確に表現したものです。

スマホの「GPS」は時間の遅れを利用している

光の速さで飛ぶ宇宙船とかブラックホールとか、自分たちの日常には関係ないSFの話でしょ?

と思うかもしれません。

実は、この「時間の遅れ」を知らなければ、現代の私たちはまともにドライブにも行けません。
なぜなら、私たちが毎日頼り切っている「GPS(全地球測位システム)」は、この理論がなければ絶対に成り立たないからです。

GPSは、地球の周りを飛んでいる複数の人工衛星から電波を受信して、現在地を計算しています。ここで、人工衛星には2つの「時間の遅れ」の要因が絡んできます。

  1. スピードによる遅れ
    人工衛星は時速約1万4000キロという猛スピードで飛んでいるため、地球上の私たちよりも時間が「わずかに遅く」進みます。
  2. 重力による遅れ
    人工衛星は高度約2万キロの宇宙空間にあり、地球の表面よりも重力が弱いため、地球上の私たちよりも時間が「わずかに速く」進みます。

この「遅くなる効果」と「速くなる効果」を合算すると、人工衛星に積まれた時計は、地球上の時計よりも「1日あたり100万分の38秒だけ速く進んでしまう」ことがわかっています。

「たったそれだけ?」と思うかもしれませんが、光のスピードで飛んでくる電波を使って距離を測るGPSにとって、このズレは致命的です。もしアインシュタインの理論を無視してこのズレを放置すると、スマホのカーナビの現在地は、1日だけで約11キロメートルもズレてしまいます。海の上を走らされたり、隣の市に飛ばされたりしてしまうのです。

GPSのシステムは、この「100万分の38秒のズレ」を毎日せっせと計算し、プログラミングで補正し続けているからこそ、私たちが迷子にならずに目的地にたどり着けるというわけです。

まとめ:時間は伸び縮みするファンタジー

時間は、決して時計の中に閉じ込められた冷たい数字の連続ではありません。 私たちが走っているとき、あるいは高い山に登ったとき、時間はほんの少しだけ、誰にも気づかれないように伸びたり縮んだりしています。

アインシュタインが頭の中だけで見つけ出した「時間の遅れ」という奇妙なルールは、100年以上経った今、宇宙の果てのブラックホールを観測するためにも、そして私たちが近所の美味しいレストランをスマホで探すためにも、欠かせない絶対的な真実となりました。

もし次に渋滞にはまってナビを睨みつけることがあったら、少しだけ宇宙を見上げてみてください。「いま人工衛星の時間は、私の時間と違うスピードで流れているんだな」と思うと、退屈な時間も少しだけロマンチックに感じられるかもしれませんよ。

※本記事では英語版も参考にしました

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